冬虫夏草は、古代中国において様々な健康にまつわる逸話が残されているきのこです。紀元前2500年頃の黄帝(「中国文明の祖」とされている)をはじめ、歴代の皇帝達に珍重されました。中でも、秦の始皇帝は、自身の健康維持のために莫大な資金を投じて冬虫夏草を探索させたという逸話が残っています。
そして、「虫に寄生する」という独特の生活スタイルを持つきのこでもあります。実際に「冬は虫の中で成長し夏になると草(=きのこ)となって姿を現す」という意味で「冬虫夏草」と名付けられています。
古代からの和漢きのこ・冬虫夏草ですが、現代科学においても健康価値が理解されるようになりました。
栄養成分においても、冬虫夏草は他のきのこや自然素材にはない独自性があります。どのような栄養成分が含まれているのか、ご案内します。
冬虫夏草に含まれる栄養成分の中で、特に健康効果において注目されているものが「コルディセピン」です。
コルディセピンは、遺伝成分DNA・RNAの仲間であり「核酸」に該当します。他のきのこはもちろん、生き物の中でも冬虫夏草にしかない健康成分であり、その活用研究も進められています。
ビタミンBやアミノ酸がバランス良く含まれていることも、冬虫夏草の特徴です。例えば、ビタミンB12などはきのこをはじめ植物質の食品にはほとんど含まれていない栄養成分ですが、冬虫夏草にはしっかり含有されています。
ビタミンB群やアミノ酸を補えることから、健康上不足しがちな栄養成分を補える食材としても有用です。
エルゴステロールやマンニトールは、きのこや菌類に特徴的な栄養成分です。冬虫夏草にもしっかり含まれており、健康をサポートしてくれます。
きのこの健康成分として知られるβグルカン&食物繊維ですが、もちろん、冬虫夏草にも含まれています。
ただし、他のきのこではβグルカン&食物繊維が健康の主役となるケースも多いですが、冬虫夏草においては、各含有成分とのトータルで健康価値を発揮していると考えられています。
以上の栄養成分だけでも多くの魅力をもつ冬虫夏草ですが、これらだけではその高い健康価値を説明しきれない、と考えられています。つまり、まだまだ未知の栄養成分が潜んでいるきのこ、と言えるでしょう。
冬虫夏草は、日本国内だけでも400種類ほどが発見されており、多様なきのこです。種類によって健康価値が異なるとともに、冬虫夏草の栽培・生産方法でも違いが生じます。
下記、冬虫夏草の主な種類・生産方法ごとに健康価値をご案内します。
主にチベットの高山地帯において、オオコウモリガの幼虫に寄生する冬虫夏草(学名:Cordyceps sinensis)です。古代中国からの伝承的な冬虫夏草と言えば、このチベット高山地帯原産のものを指すことが一般的です。
健康価値があることは間違いないものの、人工栽培が難しく、希少性から高額で取引がなされています。また、偽物が多く流通しており、利権をめぐる争いも絶えず、真偽の判断を含めて本物を入手することが困難な健康きのこと言うことができます。
チョウチョやガの幼虫・蛹に寄生する冬虫夏草で、「サナギタケ(学名:Cordyceps militaris)」と呼ばれています。中国では「北中草」とも言われています。
チベット原産の冬虫夏草と比べても、サナギタケは健康価値で勝るとも劣らず、きのこ栽培も行いやすいことから、現代では主流となっているタイプです。様々な健康価値が報告されており、コルディセピンをはじめとする栄養成分も多いことが知られています。
蚕の幼虫などに冬虫夏草の菌を植えつけ(寄生させ)、きのこ作りを行う栽培方法があります。この栽培方法は、自然界の冬虫夏草に近いことは確かです。
ただ、高コストで安全性の担保が難しく、更にはこういった生産方法が健康価値を本当に高めるのか、まだ十分な科学検証がなされていない面もあります。
昆虫を使用しなくも、サナギタケなど育てやすい冬虫夏草であれば、十分に健康価値の高いきのこ作りが可能です。実際に、サナギタケなどでは、昆虫を介さなくても自然界の冬虫夏草と同等以上の健康価値が科学報告されています。
例えば、食材に冬虫夏草の菌を植え、発酵食品として活用する方法などは、安全で用途も幅広く、コスト・健康の両面でメリットがあります。
私たちは、あらゆるきのこに携わってきた技術・ノウハウを活かし、冬虫夏草の研究にも取り組んできました。その研究&活動内容をご紹介します。
「他のきのこと比べ、健康価値のタイプが違う」という研究データを得たことが、冬虫夏草への興味を深めたキッカケです。はなびらたけ・霊芝・アガリクスなど、各健康きのことは異なるメカニズムが確認できたため、本格的な研究をスタートしました。
多くの種類・生産方法がある中、ベストの冬虫夏草を求め、様々な研究を行いました。まず、世界各地から多くの冬虫夏草品種を集め、比較&品種改良を進めました。栄養成分・健康価値・育てやすさなどを指標にした研究です。その結果、2種のサナギタケから品種改良を行ったものが最良と判断できました。
次に、「冬虫夏草の健康効果を引きだす」育て方を模索しました。きのこ作りのプロセスだけではなく、原料となる食品の選択も含め、3,000パターン以上を検証しました。
研究プロセスを経て、ようやく完成させたものが「五穀八菜育ちの冬虫夏草」です。名前のとおり、健康食材「五穀八菜」を原料として育てた発酵食品でもあります。栄養成分・健康価値・続けやすさ、全てにおいて優れた冬虫夏草に仕上げることができました。
お一人お一人、きのこを含めた食品には健康面で多少の相性があります。ある方にはピッタリ合うきのこでも、別の方にとってはさほど大きな健康価値がない、ということがあるかもしれません。その中で、冬虫夏草は、そういった健康の個人差が少ないタイプのきのこと感じています。冬虫夏草ならではの健康価値の高さと共に、「不足しがちな栄養成分を補える」というメリットも、多くの方にお勧めできる理由だと思います。「希少な最高級・和漢きのこ」という位置づけから、より幅広く「多くの方々の健康サポートができるきのこ」としてお届けできるよう、私たちも冬虫夏草・研究を続けていこうと思います。